膝関節症
  • 病名
  • 膝関節症
当院では膝の痛みで受診される患者さんは、腰痛症に次いで2番目に多い疾患です。 そのほとんどが変形性膝関節症ですが、半月板損傷や慢性関節リウマチなどの原因疾患がある場合もありますので鑑別が必要です。 膝関節に水がたまって定期的に水を抜いて、ヒアルロン酸注射を打ってもらいに何年も整形外科に通院している方や人工関節手術を勧められた方は、ぜひ鍼灸治療を受けてもらいたいと思います。 弁証論治によって体の状態を把握し、症状の原因の炎症に対して中医鍼灸治療を施すことによって、根本的に治療することができます。
  • 原因
  • 膝関節症の分類
膝関節症は以下の5つに分類されます

①変形性膝関節症、室外軟骨軟化症、ベーガー膿腫等の変形性疾患

②骨折、靭帯損傷、半月板損傷、離断性骨軟骨炎等の外傷性疾患

③慢性関節リウマチ等の炎症性疾患

④結核、細菌感染等の病原菌感染症

⑤痛風、関節軟骨石灰化症等の代謝性疾患
  • 病名
  • 変形性膝関節症の治療
膝に水がたまるのは何故?
膝に水がたまって整形外科で水を抜いてもらったら、水がたまるクセがついてしまって定期的に整形外科へ通って、水を抜いてヒアルロン酸注射をしてもらっている。という人を良く見かけますので、水がたまる原因について解説いたします。

膝関節は大腿骨と下腿骨が上下に連結しているため体重がもろに関節にかかります。
そのため関節軟骨や半月板などの衝撃を干渉するための物が備わっていて、膝関節の関節液も滑液といって蜂蜜のようにドロッとして、摩擦を吸収する働きをしています。

膝関節の周りには個人差はあるが20〜30個の滑液胞という小さな嚢があり、その滑液胞が滑液を作って関節の動きを滑らかに保っていますが、膝関節に炎症がおこると熱をもち熱くなります。そうすると体が自然に熱を冷やすために滑液を増やして熱を冷まそうとするのです。その結果関節包の中に通常以上の滑液がたまり、水がたまったというのです。

水を抜くと癖になる?
水を抜いても、抜いてもまたたまるので、水を抜くからたまるように思われるかも知れませんが、それは全くの誤解です。
膝関節に炎症がありその熱をさますために水の量が増えているので、炎症がある限り何度抜いても水がたまるのであって、抜くから癖になるのではありません。
また、水が多いことが痛みの原因になっている方は実はあまりおられません。膝関節の関節包がパンパンになるほどの大量の滑液がたまっている時は抜いたほうが良いのですが、普通にたまっている場合は抜いても痛みは軽減されません。太い注射針で刺されてものすごい痛みを我慢して抜いてもらっても、次の日にはまた同じ量の滑液がたまっていますので、痛い思いをするだけ損と言えます。
  • 施術法
  • 実際の症例と施術法
Mさん 66才 女性

平成25年1月頃から腰と左膝が痛くて近くの整形外科へ通院していた。電気治療とマッサージが中心の治療で運動療法も教えてもらい、自宅で一生懸命痛いのをこらえて運動していた。3月から左膝に水がたまりだしたので、月に一回のペースで水を抜いてもらいヒアルロン酸を注射してもらっていたが症状は悪化していき、6月に人口膝関節の手術を勧められ、どうしても手術するのはいやなので以前当院で腰痛が良くなったことを思い出して来院。

【所見】
腰椎の変形著しく第4腰椎から下の前弯は完全に消失し逆に後屈している、左膝関節水腫著しく発赤し圧通疼痛著名で可動域 屈曲40度 伸展—20度伸びも曲がりもしない。腰と膝を曲げて室内でも杖をつかって歩行する。

【経過】
7月9日初診 左膝に鍼灸治療し腰部は低周波とお灸を施す。膝の炎症が著しいのでテーピングと包帯で圧迫固定し、整形外科で指導された運動を禁止し、毎日の通院と安静を約束してもらった。10日後にテーピングを圧迫用のパットに変更 8月末水腫半減し、9月末には水腫ほぼ消失するがなおも発赤と疼痛強く、毎日通院。 12月可動域向上 屈曲90度 伸展—10度 発赤消失し、歩行痛も緩和してきたので、圧迫包帯を中止し年明け1月から週3回のペースで通院。7月には痛みを感じずに生活できるようになったので週に1回のペースでの治療で現在にいたる。

【考察】
初診時は人工関節手術をまぬがれない症状だったが半年間毎日通ってこられ、その後もこちらの指示通り通院してくることでちょうど一年で症状が改善し、普通の生活が送れるようになった。治療家としてほんとうに素晴らしい患者さんです、心から敬意を表したいと思います。鍼灸治療は「気」の医学なのでどうでもこうでも治すんだという強い気持ちが、良い結果につながったものと思われる症例です。

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