便秘・下痢
  • 病名
  • 便秘
便秘とは「排便頻度や量が低下したために、大腸内に便が貯留し、腹部不快感を伴う状態」と定義され、排便機能の異常を原因とする機能性便秘、消化管の狭窄や閉塞などを伴う器質性便秘、全身性疾患に伴う症候性便秘、薬剤の副作用の薬剤性便秘にぶんるいされ、機能性便秘はさらに弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘に分類される。
機能性便秘の弛緩性便秘が一般的な便秘と言える。治療には鍼灸治療や漢方薬が非常に有効であるが年齢、性別、体格、生活習慣、性格などを十分に検証し、診察の初めに全身疾患による症候性便秘などの可能性を排除しなければならない。

  • 治療法
  • 便秘の治療法
上記のように便秘にも原因や性質によって対処法を決定していく必要があり、特に器質性疾患による便秘や薬剤性の場合は、専門医の指示を仰ぐ必要がある。

1.生活指導
①毎朝食後トイレに座る習慣
胃結腸反射を利用した朝食後の排便習慣を身につけるために、排便があってもなくても決まった時間に10分〜15分座る習慣を付ける。
②腹筋を鍛える
腹圧を高めてスムーズな排便ができるよう腹筋運動や腹式呼吸の練習をして、腹筋を鍛える。また、ウォシュレットで肛門マッサージするのも効果的です。
③ストレス解消
心理的ストレスによる痙攣性便秘の場合は規則正しい食生活、散歩や軽い運動をしょうれいし、趣味やスポーツでストレス解消するすることが重要です。
④食事療法
消化の良い食物繊維の多い生野菜、果物、芋類、穀物などが良い。
食物が腸を通る量が増えることにより腸通過時間の短縮、便の水分量の増加、腸壁への刺激量の増加を図る事ができる。
腸内のビフィブス菌が減ると腸内が異常発酵して便秘をおこすので、乳酸発酵食品をしっかり摂取して、ビフィブス菌の増殖を助けるオリゴ糖、ビタミンB1、B2、パントテン酸、
ビオチン等の水溶性ビタミンを摂取する。

2.薬物療法
同じ薬剤を長期間使用すると習慣性を生じて、腸の感度が低下して直腸反射が弱くなり、薬剤による新たな便秘を誘発してしまうので、種類を変えるか作用機序の異なるものを併用して、なるべく長期間使用を中止することが望ましい。
①機械的下剤
②刺激性下剤(座薬、浣腸)

3.摘便
肛門から手を入れて硬く詰まった便を手で直接取り出すことを摘便という。
心疾患等できばる事が身体に負担になる患者や、長期臥床によって腸の蠕動運動や腹筋が萎えて、自力で排泄できない患者が対象となる。

余談であるが院長が若いころ勤務していた病院に、救急車で運ばれた患者は、男性同士の快楽プレイの末に、肛門に25センチのこけしが入ってしまい自力で取れなくなって、緊急で摘便でこけしを取り出したので、摘こけしエピソードがある。

4.漢方薬
5.鍼灸治療
  • 治療
  • 便秘の中医鍼灸治療
中医学では便秘は単独で扱われることは少なく、頭痛や不眠などの不定愁訴の一つとして扱われることが多い。その為便秘だけを取り上げて弁証論治することの意味も無い。
あえて弁証論治すると下の4つのパターンに分けられる。

①陰虚証
②肝鬱証
③腎虚証
④脾虚証

本治法として①補腎②疏肝③補腎④健脾する。

高齢者で夜間頻尿で就寝前に水分を控えている人は、水分不足から大腸で糞魂が乾燥して便秘になる事が多いので、便秘と一緒に夜間頻尿の治療も行わなければならない。

  • 施術法
  • 実際の症例と施術法
Yさん 82才 女性


この患者さんは、3年前より腰痛や右上肢のシビレで当院に通院されていたが、5月2日に36.9℃の発熱で内科を受診して、 感冒と診断され飲み薬を服用していたが、5月8日に顔が熱り腹が張り37.3℃の熱があった。 高齢の為、腰が曲がり側彎も著名で、胃にポリープと顕著な胃下垂もあり、 若いころから便秘がひどく、30年以上便秘薬を常用している。

【所見】
体温36.8℃ 血圧151/86 脈拍75
熱があるが手足の冷えが著名で外寒内熱していて、舌は淡紅舌で舌苔が消失し鏡面舌。 脈は浮で実、沈で虚、かすかに弦下焦の張りが強くむかつき、胸協苦満

【治療】
いつもの腰痛と右上肢の治療に加えて、大椎穴、曲池穴、左腹横穴と右期門穴、大腸兪穴の外方の阿是穴を刺激する。
朝起きぬけに水分をとることと、出ても出なくても朝20分以上便器に座るように指導する。

2診
次の日の朝、体温35.9℃、血圧118/62 脈拍70
便秘薬を服用せず朝少しだけ排便あり

3診
体調は回復し、排便もしっかりできたが、前日まで風邪薬を服用していたので胃腸の不調を訴える。

4診
便秘薬を服用せずに少量の排便をする

初診から2週間毎日治療して体調回復し、30年間便秘薬を飲まなければ出なかった便秘も完全に解消し、その後1週間に一回の治療ペースに戻したが、薬に頼ることは無くなった。

【考察】
胃下垂で胃にポリープがあり、高齢のため背中が曲がって、一回の食事の量も少なく、若いころから30年以上便秘薬を服用している、非常に重度の便秘症が2週間で薬依存から解放されたことは特筆すべき事柄である。
胃腸の動きは鈍く、一回の食事量も少なく、高齢で腹筋力も低下しているので押し出す力が弱いところに、30年という長期間下剤を使用していたので、直腸反射も弱っていたにも拘らず2週間で治癒した症例である。
  • 病名
  • 下痢

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