頭痛
  • 病名
  • 頭痛
頭痛で困っている方は非常に多く、そのほとんどは慢性的な肩こりや不眠、便秘などの不定愁訴と共におこり、日本人の3〜4人に1人の割合(約3000万人)が悩む、最も日常的な疾患の一つである。
中には何らかの疾患に伴う二次性の頭痛があり、くも膜下出血や脳腫瘍のように急を要し、生命に関わるものもあるので鑑別が必要である。
風邪ひきや二日酔いでおこる一過性の頭痛は別にして、慢性の頭痛には「緊張性頭痛」「片頭痛」「群発頭痛」があり、一般的に頭痛に悩む人のほとんどが緊張性頭痛である。男性よりも女性の方が多く、緊張性頭痛の6割、片頭痛の8割が女性である。
  • 種類
  • 頭痛の種類
1.二次性頭痛
①頭頚部血管障害
 脳出血、クモ膜下出血、髄膜炎、脳動静脈瘤など
②非血管性頭蓋内疾患
 脳腫瘍、サルコイドーシス、SLE、脳圧上昇など
③その他
 脳炎、インフルエンザ感染症、中耳炎、緑内障など


2.一次性頭痛
鍼灸治療の適応となるのは緊張性頭痛頭痛と片頭痛であり、群発頭痛での発作は鍼灸治療の適応外となり、群発頭痛は発作を起こさない予防のための治療が重要になります。そこでこの項で群発頭痛の発作時の治療についてもふれておきます。

①緊張性頭痛
頸項部から肩背部の筋緊張により、頭部の皮神経である大後頭神経や小後頭神経を圧迫され、こめかみから目の奥が重だるく圧迫されるような痛みが、持続的に慢性的に続く。激痛ではなく日常生活に支障が出るほどでないが、日常的に痛みがあり体調によって増悪を繰り返す。片側に起こることも多く、一般的に片頭痛を呼ばれているのがこの緊張性頭痛である。

②片頭痛
原因不明の頭痛で頭部の片側がザクザクと拍動性の痛みがあり、頭部を振ったり踏切のほうな高音を聴くと症状が悪化する。日常生活に支障が出るほどの激痛であるが、4時間から3日で治まる事が多い。稀に前兆のあるものもあり、重篤な場合は知覚異常や嘔気、嘔吐し、治まるまで寝たきり状態になることもある。

③群発頭痛
群発地震のように定期的に激痛が起こることから群発頭痛と呼ばれ、その痛みは三大痛みと呼ばれ「心筋梗塞発作」「尿道結石」と並ぶほどの痛みで、自殺頭痛と呼ばれ、激しい痛みで自分で頭を壁に打ち付けて自殺する人もいるほどである。
群発頭痛が続く期間は1ヶ月から長いと3ヶ月続く事がある。
発作期間は鍼灸治療不適応であり、日常的な体調管理によって発作が起こらないように予防する事が重要である。
(発作時の治療)
両目の奥をスプーンでえぐられるような、全く身動きできないほどの耐え難い激しい痛みにみまわれて、普通の頭痛薬は全く無効であり、片頭痛に効果のあるトリプタン製剤でも全く効かないので、速やかに救急車で近隣の頭痛外来の病院へ行き、イミグラン皮下注射を打ってもらうしか有効な対処法は無い。
  • 治療
  • 頭痛の中医鍼灸治療
頭痛は外感頭痛と内傷頭痛に大別されるが、外感頭痛は風邪や熱邪に侵入されて起こるものであり、鍼灸治療適応症となるのは内傷頭痛であり、ここでは内傷頭痛の治療法を紹介する。

①肝陽上抗
(症状)
頭痛、眩暈、心煩、怒りっぽい、不眠、脇痛、顔面紅、口苦、苔薄黄、脈弦有力
(治法)
平肝潜陽

②腎虚頭痛
(症状)
頭痛で頭がボーっとした感じがあり、眩暈、重だるい腰痛、精神不振、倦怠感、遺精、
帯下、耳鳴り、不眠、舌紅少苔、脈細無力
(治法)
養陰補腎

③血虚頭痛
(症状)
頭痛、眩暈、心悸、精神不安、精神不振、顔色晄白、舌質淡、苔薄白、脈細弱
(治法)
養血

④痰濁頭痛
(症状)
頭痛、頭重、胸満悶、痰涎の嘔吐、苔白膩、脈滑または弦滑
(治法)
化痰降逆

⑤血頭痛
(症状)
長期間頭痛が治らない、痛みの場所が固定していて刺すような痛み、あるいは頭部の外傷既往歴があり、舌質紫、苔薄白、脈細または細渋
(治法)
活血化
  • 施術法
  • 実際の症例と施術法
Oさん 48歳 女性

学生時代から肩こりや腰痛がひどく、マッサージや整骨院によく通っていた。
生理前には頭痛や肩こりがひどくなり、くぎっくり腰のように腰が痛くて動くことが出来ないことがあり、整骨院や整形外科で治療していたが、改善しないので総合病院でMRIで精密検査を受けてたが、特に異常はなく更年期障害と診断された。
その後も整骨院や整体院へ通院していたが悪化の一途をたどり、頭痛が著しくなってきて、仕事を休む回数が多くなってきて、退職を考えていた矢先に友人から当院を紹介されて来院した。

【所見】
ジャクソン、スパーリング、アドソン、アレン陰性
腱反射正常
左脚が1cm長いことによる軽度の右側弯症
SLR、パトリック陰性
第2頸椎棘突起右に硬結
両僧帽筋緊張著名
貧血、不整脈

【弁証論治】
頭痛、重だるい腰痛、帯下、心悸、息切れ、精神不安、精神不振、顔色晄白、
青紫舌、苔青黒、脈細弱無力

(証)   腎陽虚 血虚
(治則)  補腎陽 養血

【経過】
初診 治療後気分が軽くなり頸部の動きも少しだが改善し、痛みが軽減したので、隔日に3回通院してもらうことにした。

2診 初回で治療後すぐに全身軽くなり少し動きも改善したが、頭痛は依然ある。

3診 目の奥の痛みが緩和してきて頭痛が改善してきた。さらに隔日に3回通院してもらうことにした。

4診 頭痛が治まり全身倦怠や疲労感も解消し、右頸部の違和感と肩こり、腰の重だるさのみとなる。

5診 前日の宴会でビールを飲み過ぎて二日酔いで少し頭痛がしたが、午前中で改善しその後調子良い。

6診 頭痛や全身の不定愁訴解消したので、以後週1回の通院とする。

7診 経過良好

【考察】
頭痛は最もポピュラーナ疾患の一つであるが、実際の治療の現場では西洋医学的診察で原因が分かるケースは少ない。大病院で脊柱や脳をMRIなどの大掛かりな検査をしても、画像診断で目に見える原因はないからである。
この患者さんは貧血と不整脈があり一見頭痛と何の関係も無いように思えるが、東洋医学ではこれを見落とずに血虚による頭痛であると診断する。また、倦怠感や重だるい腰痛が続いていることから腎虚と判断されるのである。
このように更年期障害や月経前後症候群と呼ばれるような症状も全て治療出来てしまうのが中医学の醍醐味であると思われる。

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